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'03.07.31 メルマガ発行 '03.08.10 web版 発行 |
No.006 '03.07.31 [キース・ジョン・リサイタル] プログラム/ウェールズの作曲家マサイアス きょうは、 前回お知らせした“キース・ジョン・リサイタル”(8/24[日]午後2時)の プログラムについて説明しよう。 ◆◆ キース・ジョンと8月24日のプログラム 主催者から特別の要請がない限り、オルガンコンサート・シリーズのために白石市へ招聘するオルガニストは、私自身が今最も聴いてみたいと思うオルガニストや、また、広く音楽ファンやオルガンファンに聴いて頂きたい演奏家だ。 (詳しくは 8/20発売「レコード芸術」9月号の特集記事を読んで頂きたい。) キース・ジョンは、過去40年の間にライヴや録音を通じて私が注目した数少ない演奏家の一人だ。ストップ(音色)の使い方が格別に巧く、かつ独創的であること、またそれを生かして知的な作品解釈を聴かせるという点で、現在活躍しているオルガニストの中でも唯一無二の存在と言えよう。 3月に演奏したカーリーが創造的な音色よりもデュナーミクやルバートに重きを置き、いわば曲線を描くような音楽を聴かせるのとは対照的に、ジョンの演奏はシャープで「直線的」だと言えるかもしれない。絵画にたとえるなら、澄んだ冬の日に何キロも先までくっきりと見渡せるような、パースペクティヴを感じさせる演奏なのだ。 今回も、オルガンはもちろんクラシック音楽にも馴染みのない方々から、ベテランの音楽ファン・オルガンファンに到るまで、できるだけ広いリスナーに アピールできるようにプログラムを組んでいる: http://organconcert.info/cube/conc-j.html 最後のリストの曲は通常「アド・ノス」と呼ばれているもので、リストのオルガン作品として最も大規模なものであるだけでなく、19世紀ロマン派のオルガン音楽として重要なものの一つと言えるだろう: http://www.asahi-net.or.jp/~nj8f-tkmt/works_organ_s259_s268.htm
ここでは、今回演奏される曲の中で最もなじみの薄いマサイアスについて特に説明したい。日本ではほとんど知られていないが、ウィリアム・マサイアス(1934-1992) はウェールズ出身の最も重要な作曲家の一人である。 ウェールズは南西イングランドに位置し、四国ほどの面積を持つ英国の一地方で、スコットランドや北アイルランドとともにケルト人の末裔が住んでいる(ウェールズ人)。最も早くイングランドに併合されたが、今日再びウェールズ語の教育が行われ、英語とならんで公用語になるなど、民族の伝統が重んじられている。 マサイアスはウェールズ人であることを自覚し、ヨーロッパのクラシック音楽の手法を用いてウェールズの伝統文化を自らの作曲に反映させることを強く意識した作曲家だった: http://www.musicweb.uk.net/mathias/ (英語) 良い意味で職人気質のマサイアスの作品には、生涯を通じてそれほど大きな変化発展は見られない。別の見方をすれば、彼の作品は一貫して相応の水準を維持していたとも言えるだろう。今回演奏される「パルティータ」は 1962年 28歳の時に創られた、初期のオルガン作品。 マサイアスのオルガン音楽の多くは、調性を保持してはいるが、多くの20世紀作品同様に三和音によらない音楽で、一聴したところドライな印象を受ける。4度(や5度)が支配的なのだが、これは彼の民族的な伝統と重なっていて、作品全体に中世的な響きを与えることとなる。 三和音、つまり三度に依らない現代音楽ということは、不協和音の多用を意味する。けれども、マサイアスの不協和音は、実にニュアンスに富んでいる。「不協和度」を色の「濃淡」にたとえると、いわばモノクロム写真におけるグラデーションのようであり、そこから紡ぎ出される音色感は、なかなか味わい深いものである。もっともパルティータでは、後期の作品と比べると不協和音の使い方はかなり簡素だ。(ちなみに、三度と訣別した和声は、19世紀から普及した平均律の調律法にふさわしいものでもあった。) 交響曲3曲と協奏曲11曲を含む管弦楽、室内楽、合唱曲などが、英語圏諸国ではよく演奏される。マサイアスの作品に共通するのは劇的表現と渋い叙情性だ。それはこのオルガンのための「パルティータ」にもよく表れている。ヒンデミットやショスタコーヴィッチに通じるものを感じると言う人がいるかもしれないが...。 ● 米国のミネソタ・ラジオのオルガン番組『パイプ・ドリームズ』のウェブサイトで、全曲を聴くことができる。ジョンのコンサートに来られる方は "予習" しておかれるといいかもしれない: ( PIPEDREAMS Program No. 0141 "Partita Time" ) オーディオは、ここから直接聴くことができる ( リアル・オーディオのなので、かなり音質は悪い )。 演奏者は英国生まれでカナダ在住のオルガニスト、フィリップ・クロージャ。上記アドレスにアクセスすると Real(One) Player が起動するので、再生ポジションを 1:09:16 の手前まで早送りすると、1楽章から聴くことができる。(演奏時間 合計14分30秒) なお、DJのマイケル・バローンによるこの曲の解説は 1:08:25 あたりから始まる。 ★ キース・ジョン自身による今回のコンサートの曲目解説(英語)
著作・発行: 大林徳吾郎 Copyright (C) 2003 無断転載禁止 [OrganConcert] のホームページ: http://organconcert.info/mm/
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