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メールマガジン OrganConcert   ( アーカイヴ/バックナンバー )



'03.07.01 初版


 





No.003  '03.07.01

なぜオルガンコンサート?(3) 【教会から外へ ... エドウィン・ルメア】


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◆ なぜオルガンコンサート? (3)
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【教会からコンサートホールへ】

オルガンと言う楽器、またオルガン音楽の受け止め方は人さまざまだ。特に 日本では、「バッハ=偉大な宗教音楽家」といった固定観念がそれとなくある上に、オルガンという楽器も知的というよりは情緒的な面が強調されて扱われやすい。ヨーロッパの教会の中では、おとなしく控え目な演奏が優れた楽器の 響きと結びついて、重厚感ある荘重な音楽となる。楽器や音響に逆らうような演奏は、場合によってはうるさく聞こえるだけなのだ。

一方コンサートホールの乏しい残響の中では重厚な演奏は、ともすれば、単調でつまらない音楽に陥りやすい。こうして、一部のオルガンファンが求めるものが、逆に音楽ファン全体にアピールしないという悪循環を招いている。

特に、ともすれば貧弱なホールの音響と乏しいオルガンの音に加え「重厚で教会的な演奏」は、生き生きとしたリズムや色彩感を欠く場合には、耳の肥えた音楽ファンにとって全く魅力のないものとなる。

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ドイツやフランスなどヨーロッパ大陸では、オルガンは教会のものであり、 コンサートホールに設置されている例は少ない。オルガンが初めて教会の外で 頻繁に演奏されるようになったのは、19世紀後半の英国で起こったことだ。 コンサート会場や各地の公会堂に競ってオルガンが設置され、20世紀になるとアメリカでもコンサート用のオルガンが多数生まれた。

オルガンとオルガン音楽は、イギリス、アメリカ、その他の英語圏諸国では 初めて宗教を離れ、市民のものとなったのだ。こうした状況は大恐慌を迎える 1920年代の末まで続いた。

【幅広い聴衆に迎えられたコンサートオルガニスト、エドウィン・ルメア】

この時代に活躍したオルガン演奏家の中でずば抜けた存在が、エドウィン・ルメアだった。イギリスに生まれアメリカを中心に演奏活動を行ったルメアこそは、史上最も人気を博したオルガニストと言えるだろう。バッハから 自作曲にいたるオルガン作品や無数とも言える管弦楽曲の編曲に加え、 即興演奏にも秀で、かつ、モダンなオルガンの演奏技法を編み出したヴィルトゥオーゾ。それだけでも、音楽史上最も偉大なコンサートオルガニストだったと断定できるほどだ。しかしその上、華麗な演奏によって毎回数千人という聴衆を動員したというから、彼はビートルズ以前の最もポピュラーな演奏家だったとも言えるのだ。

近年トランスクリプション(編曲演奏)がオルガニストのレパートリーとして十分認識されるようになったが、ロマン派管弦楽作品を弾く者の多くは ルメアに負うところが大きい。

  エドウィン・ルメア   http://pipeorgan.jp/music/lemare-j.html
  ( ロールによる記録をもとに復元したルメアの演奏を聴くことができる )

  "EDWIN H. LEMARE" by Nelson Barden  http://orgel.com/music/ehl/  (制作中)
  ( 英語・仏語 ... 英語の第1&2章のみほぼ校正済み.仏訳は参考のみ )

ルメアの引退後、"専業"コンサートオルガニストの伝統が地上から途絶え、 それとともに彼自身の名前も忘れ去られた。全20巻、17000頁余のニューグローヴ音楽辞典(初版)にさえその名前が見あたらない。これは驚くべきことだが、事実上祖国を棄てた故に彼の評判が良くないとすれば、いかにも 英国らしい (註:ニューグローヴ執筆陣は英国中心)。しかし大きな理由の 一つは、彼のような「コンサートオルガニスト」の活躍が宗教と教育を中心としたオルガンの世界から隔離していたからだろう。おまけに彼は、レコードとしての録音を事実上残していなかったので、ごく最近までその演奏がどのようなものであったのか、ほとんど判らなかったのだ。これらの事情は、いま 日本で行なわれている様々な「オルガンコンサート」と照らし合わせてみると面白いだろう。

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コンサートオルガニストと教会オルガニストとをはっきりと区別できるわけではない。聴衆のために音楽を演奏するオルガニスト、そしてルメアのように オルガンという楽器を完全に理解した上で多数の聴衆を感動させることができるようなオルガニストを、コンサートオルガニストと呼ぶのが妥当だろう。

百年前も今も、地球上に教会オルガニストは十万人を数える一方で、コンサートオルガニストと呼べるようなオルガニストは十人いないかもしれないのだ。

日本では自治体のホールを中心に大型のパイプオルガンがかなり設置されたが、まずはこうしたオルガンコンサートの伝統を踏まえた上で、今日本で 何ができるのか、何をすべきなのか、多角的に考えてみることは無駄ではないはずだ。


著作・発行: 大林徳吾郎     Copyright (C) 2003  無断転載禁止





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