キース・ジョン オルガンリサイタル
2003年8月24日(日) 午後2時 開演


プログラム・曲目解説



G.F.ヘンデル 「水上の音楽」 第2組曲および第3組曲から (オルガン編曲:キース・ジョン)
G. F. Handel (1685-1759): The Water Music

i) Ouverture (Allegro) -Adagio - ii) Hornpipe iii) Menuet iv) Air v) Gigue 1, Gigue 2 vi) Coro

「水上の音楽」は、1717年7月にテムズ川で行われたの王室の舟遊びのための音楽と考えて間違いないだろう。イギリス国王ジョージ1世はこの音楽をたいへん気に入り、船が往復する間に「3回」、「1時間にわたって」演奏させたと、プロイセン王国の大使は祖国ベルリンへ報告している。往路と復路にそれぞれ3回演奏したのか、それとも合計3回だったのかは定かでない。また、「3回」の各々が1時間も続いたとすれば、「水上の音楽」として今日知られる20の楽章が全て演奏されたのだろう。これらの楽章が以下の3種類に大別できることは興味深い: 1) ヘ長調の「ホルン系」組曲; 2) ニ長調の「トランペット系」組曲; 3) ト長調とト短調の「フルート系」組曲である。3種類の組曲全てを演奏するには、相当な数の演奏者が必要だが、Daily Courant紙の記事には、この演奏のためにロンドンの商業組合が所有する大型の遊覧船が貸し出され、あらゆる種類の楽器奏者50名が参加した、と記されている。今日演奏されるのは、繊細なメヌエットから快活なジーグ(舞曲)やフルオーケストラのための力強い音楽(オルガンの場合はフル・ストップで奏される)まで、ヘンデルの優れた、親しみやすい音楽の中から選ばれた、変化に富む楽章のいくつかである。


ウィリアム・マサイアス  パルティータ Op. 19
William Mathias (1934-1992): Partita

i) Maestoso -Allegro non troppo
ii) Lento alla Marcia
iii) Allegro ma non troppo

1962年に作曲されたウィリアム・マサイアスの「パルティータ」は、カンタベリー大聖堂の元オルガニストであるアラン・ウィックスの委嘱によるものである。ウィックスは当時の英国の「現代」音楽の擁護者だった。この作品は、マサイアスの一連の重要なオルガン作品の最初に位置するものであり、彼の個性的スタイルの特徴の多く 《特に、舞踊的でしばしばシンコペーションを多用したリズム、そして伝統的な3度に代わって4度を主体とする和声》 をすでに備えている。

第1楽章は地味なファンファーレで始まり、作品全体を支配する2つの主旋律が予告される。その後、快活な12/8拍子による楽章の主要部が始まる。一貫して軽やかなリズムの中に音楽の起伏があり、やがて楽章は静かに終わる。第2楽章は遅いテンポで力強く表現力に富み、作品全体の中心をなす。実質的には葬送行進曲と言えよう。無情なリズムは、音楽をあいまい模糊としたな開始部から大きなクライマックスへと容赦なく駆り立て、さらには遠くの彼方へ連れ去って行く。ロシア的な趣を濃くたたえており、ショスタコーヴィッチを想起させる。生き生きとしてリズミカルな最終楽章では、さまざまな拍子記号(奇数のものを含む)が現れ、またシンコペーションも頻繁に見られる。楽章は次第に発展していき、ついに第1楽章冒頭のファンファーレ風旋律が荘厳に再提示される。そしてコーダが高揚を見せ、堂々と音楽は幕を閉じる。


ブラームス  聖アントニウスのコラールによる変奏曲  (オルガン編曲:キース・ジョン)
J. Brahms (1833-1897) Variations on the St. Antoni Chorale

Chorale. Andante
Variation 1. Poco piu animato
Variation 2. Piu Vivace
Variation 3. Con moto
Variation 4. Andante con moto
Variation 5. Vivace
Variation 6. Vivace
Variation 7. Grazioso
Variation 8. Presto non troppo
Finale. Andante

この作品は1873年の8月、2台のピアノのためのバージョンとして、ボンの私的な集いに於いて作曲者自身とクララ・シューマンによって披露された。11月にはブラームス自身がウィーン・フィルを指揮してオーケストラ版の初演が行われた。第1交響曲に先立つブラームスの最初期の作品だが、管弦楽法のみならず「形式」に対する熟達をも示し、数多くの「主題と変奏」(変奏曲)の中でも最も優れた例の一つだと言えよう。ブラームスは多くの点でオリジナルのコラールに忠実だ。(管楽合奏のための6つのディヴェルティメントからなる楽章は、現在ではハイドンの作でないことが判明している。) 例えば和声構造は全変奏を通じて共通であり、繰り返しのある単純な二部形式(AABB)など。

このわく組みの中でいくつか、すばらしい、技巧的な工夫がなされており、とりわけ2つの変ロ短調の変奏、即ち第4変奏では、12度で入れ替えた転回対位法が用いられているが、自然なので聴くものはほとんど気付かないほどだ。もう1つは第8変奏で、何小節にもわたる転回した旋律による完全な模倣が行われる。最後のパッサカリアの5小節にわたる主題は、5小節という特異な長さを持つコラールの「A部分」から導き出されたものである。主題は主に低音部に長調で現れ、17回繰り返されて、最後の雄大なコラールと、極めて効果的な終結部へと導かれる。


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アルビノーニ & ジャゾット   アルビノーニのアダージョ
T. Albinoni (1671-1750) / R. Giazotto (1910-1998) Adagio in G minor

「アルビノーニのアダージョ」として今日広く知られている音楽はレモ・ジャゾットによるものである。彼はアルビノーニの伝記を書くために、ドレスデンの図書館で調べものをしている時にトリオ・ソナタの断片を発見した。残っていたのは、数字付きの低音部と、たった2つの短い旋律だけであり、作品の大半はジャゾットの創作と言ってよい。このロマンティックな音楽はこうして生まれた。バッハの「G線上のアリア」同様、高音部が奏でる旋律に呼応して、低音では穏やかにピッチカートがオクターヴの跳躍を繰り返しながら少しずつ動いていく。しかしG線上のアリアとは違い、こちらの低音は時々その運動を止めてレチタティーヴォのような語りが終わるのを待っている。曲のクライマックスでは、豊饒な和音と複付点のリズムがドラマを作り上げる。


リスト  コラール 「私たちへ、救いを願う人々へ」 による幻想曲とフーガ
F. Liszt (1811-1886) Fantasia and Fugue on "Ad nos, ad salutarem undam"

リストが1850年に作曲した、最初の、最も優れた、そして最も規模の大きいオルガン作品である。作曲家マイヤベーアのオペラ「予言者」に使われているコラール(Ad nos, ad salutarem undam)にもとづいて作られた作品で、彼に捧げられている。リスト自身による4手のピアノ用バージョンもあるが、名ピアニストで作曲家のブゾーニがピアノ独奏用に編曲しており、それはリストの原曲を、しばしばより効果的なものへと潤色している。

作品は明確に3つの部分に分かれる: 幻想曲、中間の緩徐部分、そしてフーガである。幻想曲では、マイヤベーアの主題のうち最初の2フレーズのみが使われる。非常に静かに演奏されるアダージョ部分の開始部ではじめて、コラールの主題全体が現れる。この幻想曲には、激しい動きがあるかと思えば、流暢でよく歌う部分がある。そしてこれらは、厳格なリズムを持つものから、より自由なものや、あるいはまたレチタティーヴォのような部分もある、といったふうに、非常に変化に富んでいるのが特徴だ。つねに劇的な要素を備えているが、マズルカ風のリズムを持つフーガが名人芸(ヴィルチュオーソ)的な見せ場で始まるのはその好例である。

リストの多くの(例えばピアノソナタの)フーガ同様、厳格な形式は初めの部分だけで、やがてはより自由で即興的な扱いとなる。速いパセージがかなり続いて、ファンファーレが鳴り響いた後に、短いペダルのカデンツァがあり、そして輝かしい勝利の宣言としてハ長調のフル・オルガンでコラールが奏され、曲は幕を閉じる。


キース・ジョン  (大林徳吾郎 訳)



First uploaded: 2003. 8. 17 ; last updated: 2003. 8. 26